入省後の研修では、社会人としての基本マナーや文書の取り扱いを学ぶとともに、農水省の主要な政策について理解を深めました。特に印象的だったのは、合理的根拠に基づく政策立案のグループワークです。政策は作って終わりではなく、実施後の評価と改善が不可欠であり、政策の実行と評価の重要性を体感しました。さらに、全省庁から1年目が集まる、省庁合同研修では幼児教育の政策立案に挑戦。専門外の分野に触れ、法律や制度の観点から考える経験を積みました。
入省理由
学生時代から食品ロス削減に関心があり、政策講演会で「企業に食品ロス削減の取組を促せるのは国だけ」という話を聞きました。行政の役割の大きさを実感し、国の施策を通じて社会に貢献したいと考え、入省を決意しました。
現在のしごと内容
事業系食品ロスの削減に向け、国際会議資料の確認や白書の作成、資料作成など多岐にわたる作業を行っています。また、食品リサイクルの推進のための優良事業者の登録制度の運用も担当。国会対応や大阪万博での食品ロス削減の啓発活動にも取り組んでいます。
学生時代に力を入れたこと
生協学生委員会に所属し、学生の生活向上に向けた活動に取り組みました。特に、食生活の改善を目的とした自炊教室の企画運営に注力。献立作成や運営の工夫を重ねる中で、食の課題に関心を持つきっかけになりました。


政策立案のグループワークでは同期の発言の速さに圧倒されながらも、施策の実行と評価の重要性に気づくことで視野が広がりました。さらに、地方研修では、広島県廿日市市に訪問。観光地ならではの税収の使い方や、自治体独自の施策を学びました。実際に政策の現場に触れたことで、自分が携わる仕事の広がりを実感。研修を通じて、国の施策によって地方の施策の方向性も決定するため、国の役割の重みを再認識しました。
班に配属され、初めて自分が担当した業務は、食品ロス削減のため、75業種に分類された食品業界ごとに適切な食品廃棄物の発生量の基準を設定するというものでした。まずは過去に用いられた計算方法を洗い出し、それぞれのメリット・デメリットを整理することから始めました。その上で、「どの方法が実態に即しているか?」を議論しながら、より正確な基準を導き出す作業を進めました。単なる数値の算出ではなく、業界全体が納得できる基準にするための調整も必要で、試行錯誤を重ねていきました。


初めての大きな業務に、責任の重さを感じましたね。自分が導き出す数値が、業界全体の指標になる。その影響の大きさを考えると、不安もありました。最初は統計の知識も乏しく、何を基準に判断すべきか迷う場面も多かったですが、上司と議論を重ねるうちに、少しずつ政策としての形が見えてきました。最終的に審議会で基準が承認されたとき、自分の仕事が社会に影響を与えるという実感が湧き、政策づくりの責任とやりがいを強く感じましたね。
秋に入り、初めて国会対応の業務を経験しました。食品ロスやフードバンク支援に関する質問が出され、短時間で答弁案を準備する必要がありました。まず、過去の答弁例や関連資料を精査し、政策の背景や論点を整理しました。国会は、国として何を行っているのかお伝えする場であり、簡潔にわかりやすい答弁を作成する重要性を学びました。


初めての国会対応は、これまで経験した業務とはまったく異なり、プレッシャーを感じました。限られた時間の中で答弁を準備するため、スピードと正確さの両方が求められました。関係課と調整して答弁を作成する必要がある問も多くあったため、迅速に調整しつつ答弁を作成することが大変でした。また、答弁作成のための段取りが多いため、抜け漏れなく作業を進めるために部署内でも状況を共有しミスなく進められるように心がけました。
食品ロス削減の基準づくりに引き続き取り組む中で、業界ごとの実態を考慮しながら、審議会や関係団体へ説明を行い、意見を取り入れながら基準の調整を進めていました。その後、審議会で基準が承認され、国民からの意見を募るパブリックコメントを実施。最終調整を経て、法令審査官と協議しながら告示の条文を確定し、正式に制度として制定されることになりました。基準づくりに取り組み続けたことで、政策がどのように社会に適用されていくのか、そのプロセスを深く理解することができました。


審議会や関係団体への説明を通じて、政策が現場に与える影響をより強く意識するようになりました。業界の意見を聞きながら調整を重ねる中で、政策の実行には多くの視点が必要であることを実感しましたね。最終的に基準が告示として公表されたとき、安堵とともに達成感が込み上げました。自分の仕事が社会に反映される瞬間を目の当たりにし、政策を形にする責任の大きさを改めて認識するとともに、これまで積み重ねてきた議論が、ようやく一つの成果として形になったと感じました。

現場の声を聞きながら、
広い視野で政策を実行していきたい
1年目は政策の基礎を学び、基準づくりや国会対応を経験しました。2年目以降は、現場でどのように制度が運用されているかを意識しながら仕事に向き合いたいと考えています。2年目で行った農村派遣研修では、生産者の声を直接聞くことで、政策が現場に与える影響を実感しました。今後は、そこで得た知見を業務に活かし、より実態に即した政策のあり方を考えていきたいと思います。また、後輩をサポートする場面も増えてくるため、学びながら経験をつなげていく意識を持ち、より成長していきたいです。