人を知る

キャリア座談会

異なる経験を活かし、未来をつくる。
キャリア職員が語る、『挑戦と成長』

民間企業から農林水産省に入省したキャリア職員3人が登場。
それぞれの視点から、転職の理由や現在の業務、キャリアの展望について語ります。

MEMBER

海老 勇吾
農産局 農産政策部 農業環境対策課 係長

令和6年入省
農林水産省選考採用(総合職係長級(技術系))
農学生命科学研究科

山田 大樹
輸出・国際局 国際地域課 係長

令和5年入省
農林水産省選考採用(総合職係長級(事務系))
工学研究科

廣川 結花
輸出・国際局 総務課 国際政策室 係長

令和4年入省
輸出・国際局選考採用(一般職)
文学部

Q1転職を考えた理由、農林水産省を志望した理由を教えてください。

山田

私はこれまで商社やコンサル会社で働いていました。商社では食品の輸出入に関わっていたのですが、こと日本産食品の輸出においては規制やコスト、物量の壁があり、なかなか拡大できない現実がありました。

廣川

確かに、日本産の食品は品質が高くても、輸出にはいろいろな課題がありますよね。

山田

そうなんです。海外では日本産の食品は評価が高いのに、思うように輸出拡大につながらないもどかしさがあったんです。その後、コンサル業界に転職しましたが、より社会に直接貢献できる仕事がしたいと考えるようになり、政策レベルで農業支援ができる農林水産省への転職を決めました。

海老

実際に輸出の現場を見てきたからこそ、政策の重要性を感じたんですね。

廣川

私も「社会に貢献できる仕事をしたい」という思いは大きかったです。航空会社に長く勤めていましたが、コロナ禍で外部出向し、東京都の給付金業務に携わる機会がありました。その仕事が社会に直結しているのを実感し、国の仕事に興味を持つようになりました。

海老

私も「社会全体に資する仕事をしたい」と思って転職しました。廣川さんが国の仕事に関わることで社会への影響を実感したように、私は「食」という身近な分野を通じて貢献できることに魅力を感じました。

廣川

もともと食には関心があったんですか?

海老

はい。実は農学部出身で、大学では農業の研究をしていました。消費者との距離が近い業界で働きたいという思いがあり、新卒では化粧品メーカーに入ったんです。BtoCのビジネスに携わる中で、より広い視点で社会に貢献できる仕事がしたいと考えるようになり、政策の面から食に関わる農林水産省に転職しました。

山田

なるほど。もともと学んでいた分野に戻りつつ、より大きな視点で関われる環境を選んだんですね。

海老

はい。政策という形で社会に貢献できるのが、今の仕事の魅力だと感じています。

Q2現在の仕事内容とやりがいを教えてください

海老

私は農産局農業環境対策課で、環境への負荷を低減した農業を推進するための総括業務を担当しています。政策がどのように決定されていくのかを日々学べるのは大きなやりがいですね。

廣川

総括業務はやることが多岐にわたりますよね。特にどのあたりに面白さを感じますか?

海老

自分の担当範囲が広いからこそ、政策全体の流れを俯瞰できる点ですね。事業ごとの調整をしながら、どういうプロセスで政策が形になっていくのかを間近で学べるのが面白いです。

山田

確かに、政策の基盤を支える立場ですよね。私 は輸出・国際局の国際地域課で、主に欧州地域の各国や欧州委員会との二国間会談、政策対話の調整を担当しています。各国への輸出拡大や規制撤廃に向けた交渉、協力覚書を通した相互協力の推進など、日本の農林水産物の輸出促進を支援することが主な業務です。

海老

国ごとに規制や輸入条件が違うから、調整も大変そうですね。

山田

そうですね。例えば、日本産食品が輸入規制の対象になっている場合、二国間会談を通して、規制の緩和を求めたりします。食品の安全基準が厳しい国に対しては、科学的根拠を示して、日本産の食品の安全性を理解してもらうよう働きかけていきます。話し合いは長期間に及ぶことも多く、長い調整の末、規制緩和や日本産食品の輸出拡大につながった際は、やりがいを感じますね。

廣川

私も山田さんと同じ輸出・国際局ですが、現在は輸出促進に直接関わる業務ではなく、総務課で、現場を支える仕事をしています。具体的には政務の外国出張の準備や国際会議の運営管理を担当しています。

山田

廣川さんの業務は実際の交渉の場を支える仕事ですよね。とても責任感のある業務だと思います。

廣川

そうなんです。政務の外国出張の準備や外国の要人が来日する際の表敬訪問、オペレーションルームの管理を担当しているので、関係者との調整や現場での対応が多いです。特に政務の出張準備は、関係者が多岐にわたるため、調整が複雑であったり、時にはイレギュラーな事態が発生することもありますが、その状況を乗り越えた時の達成感は大きいですね。

海老

柔軟な対応や現場での判断力が求められそうですね。

廣川

はい、想定外のことが起こるのは日常茶飯事です(笑)。でも、その場で解決策を見つけて進めていくのはやりがいがあります。

山田

それぞれ役割は違うけど、政策を形にするための重要な仕事ですね。

海老

本当にそう思います。自分の仕事が大きな仕組みの一部になっているのを実感できるのが、この仕事の面白いところですね。

Q3前職までの経験はいまの仕事にどのように役立っていますか

廣川

前職では、悪天候での欠航対応など、急なトラブルへの対応が欠かせませんでした。また、常に目の前のお客様への迅速かつ的確な対応と、待機している他のお客様への配慮を求められていたため、瞬時の判断力が鍛えられましたね。

海老

今の仕事でも、そうした柔軟な対応力が求められそうですね。

廣川

はい。国際会議や要人の訪問において、現場での対応力はそのまま生かされています。

山田

私も、商社での経験が調整能力という点で活きています。世界中の様々な業界の企業の間に入り、事業が円滑に進むよう調整し続け、関係者の合意点を探ることが重要でしたが、国際関係においても同じです。相手国の政治情勢や歴史、文化、未来へのビジョンを踏まえながら、日本の立場を理解してもらう必要があります。

海老

関係者を調整する力は、省内の業務でも必要ですよね。

山田

そうですね。省内の関係部局や他省庁、各国の駐日大使館と連携しながら話を進める際も、それぞれの意図を汲み取り、調整する力が求められます。

海老

私も法人営業や企画の経験が、総括業務での調整力に役立っていると感じます。特に、省内の各部署と連携しながら業務を進める点は、前職で培った交渉力が活きていると思います。

廣川

どの仕事でも、調整力は共通するスキルですね。

山田

本当にそう思います。環境は違っても、関係者をまとめて動かす力は、どの仕事でも大事ですね。

Q4農林水産省に入省してよかったと感じるのはどんな点ですか?

海老

一番大きいのは、政策の決定プロセスを学びながら、それを支える役割を担っていることですね。前職では企業単位で考えていましたが、今はより広い視点で、農業や環境政策の調整の一部に携われるのが面白いです。総括業務を行っているからこそ、省全体の流れを俯瞰できるのも魅力ですね。

廣川

私も農林水産省に入省して国の予算や法律の仕組みを学ぶことができ、また日本の食を守るために様々な政策や法律があることを知り、視野が広がりました。

山田

確かに、農林水産業って一つの産業というより、食や環境、国際関係にも関わる幅広い分野ですよね。私の場合は、もともと「食の輸出」を軸に考えていたので、実際にその分野に携わっていることが大きな魅力です。

廣川

あとは、業務の幅が広いのも魅力ですよね。私のように前職が全く違う分野だった人でも、それぞれの経験を活かせる場面が多いと感じます。実際、周りにも多様なバックグラウンドを持つ方がいて、それぞれの強みを活かしながら仕事ができる環境なのはありがたいですね。

山田

そうですね。多様な人がいるからこそ、いろんな視点で議論ができるのは、政策を作るうえで強みになっていると思います。

海老

あと、スーパーで買い物をするときに農産物の背景が気になるようになりました(笑)。この野菜はどんな認証を取っているのかとか、生産者の工夫とか、以前より意識して見るようになりましたね。

廣川

それ、すごくわかります!私も、仕事を始めてから食品の産地表示や輸出状況が気になるようになりました。仕事と日常がリンクしているのも、面白いところですよね。

Q5入省前に抱いていたイメージと、実際に働いてみて感じたギャップはありますか?

廣川

公務員の仕事は決まった手順通りに進めるものだと思っていましたが、実際は柔軟に対応する場面が多い点が意外でした。業務を進める中で「もっと良いやり方はあるのだろうか」と考えることが求められることも多く、特に国際業務では想定外の出来事が日常茶飯事なので、臨機応変な対応力が重要だと実感しています。

山田

わかります!私も、もっとトップダウンで指示が降りてくるイメージだったんですが、実際は「君はどう思う?」と意見を求められることが多く、若手でも考えて発言する機会が多いのが意外でしたね。政策を作る上で、現場の意見やデータをもとに議論を重ねていくプロセスが重要視されているのは、新鮮なギャップでした。

海老

私は、公務員の職場はもっと堅い雰囲気かと思っていましたが、意外とフラットで相談しやすい環境でした。特に、総括業務では色々な部署と関わることが多いですが、皆さん丁寧に対応してくれるので、すごく仕事がしやすいですね。困った時に周りがサポートしてくれる雰囲気があるのは、良い意味でのギャップでした。

廣川

確かに。入省前は、もっと縦割りで部署ごとのつながりが少ないのかと思っていましたが、実際は色々な部署と連携しながら進める仕事が多いですよね。各分野の専門家と関わりながら進める仕事は刺激があります。

山田

そうですね。それに、想像以上に人と話す機会が多い仕事だとも感じました。省内だけでなく、企業や自治体、海外の関係者など、様々なステークホルダーと調整しながら進めていく仕事が多いので、コミュニケーション力も重要だなと実感しています。

Q5仕事やキャリアにおいて、目標としていることや達成したいことを教えてください。

海老

将来的には、「これをやってよかった」と言われるような政策を作りたいです。そのために、まずは政策がどのように決定され、実行されていくのかをしっかり理解することが重要だと考えています。今の総括業務を通じて、各部署の動きや調整の流れを学びながら、いずれは自分が中心となって政策を進める立場になりたいですね。

廣川

私は、今の業務を極めて、縁の下の力持ちとして現場を支えられる存在になりたいです。国際業務では多くの関係者が関わるので、スムーズな調整が求められます。最前線で活躍する職員が安心して業務に集中できるよう、対応力をもっと磨いていきたいです。

山田

私は、農林水産省を志望した理由でもある「稼げる農林水産業の実現」に貢献したいというのが一番の目標です。そのために、できるだけ多くの部局を経験し、商材や規制の理解を深めていきたいですね。いずれは海外赴任の機会を活かして、現地の市場動向や政治的な背景を学びながら、日本産食品の輸出拡大に貢献できるようになりたいです。