食料安全保障
食料安全保障は、国家の最も重要な責務の一つです。その責務を果たすため、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと併せて安定的な輸入及び備蓄の確保を図ることとしています。世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることに鑑み、平時から農業の持続的な発展を図ることで国内の生産基盤を強化しています。また、各国との関係性を構築することで、必要な食料や生産資材の安定的な輸入などを展開するとともに、不測の要因により食料供給が困難となる事態を未然に防止するための基本的な対処方針についても定めています。
抜本的な生産性向上を図り、食料安全保障を確立する。

廣金 沙季子
大臣官房 政策課 企画官
2018年入省/法学部卒/総合職事務系(法律)
Q. 食料安全保障の確立へ向け、
どのような施策を実行していかねばならないか?
農林水産省の最大のミッションは、食料の安定供給にほかなりません。この維持・実現に向け、農林水産省の各局が様々な施策を講じています。
My Answer
私が所属する政策課では、世界的な食料需要の増加などの食をめぐる世界の潮流や、人口減少や物価高などの国内の情勢をとらえ、目の前だけでなく、将来を見据えながら、農林水産省全体の施策の方向性の舵取りをしています。また、政府方針に農林水産省の施策をどのように位置付け、我が国の安全保障や地域・経済の活性化につなげていくか等を検討しています。
最近のトピックとしては、令和7年(2025年)に、今後5年間の施策の方向性を示す新たな「食料・農業・農村基本計画」を策定し、この5年間を「農業構造転換集中対策期間」と位置付けたことが挙げられます。新たな基本計画に基づき、農地の大区画化、スマート農業の推進、輸出の促進などの多岐にわたる施策を講ずることで抜本的な生産性向上を図り、稼げる農業を実現することで、人口減少社会にあっても食料安全保障を確立することを目指しています。農業者、食に関するサプライチェーンの事業者、自治体、関係府省庁など幅広い関係者とともに施策を実行していくことで、農業の構造転換を集中的に推し進めていきます。

Q. 全国の魅力的な農産物がこれからも
食卓に届くために必要なことは?
日本では北海道から九州まで多様な農業が営まれ、それぞれ特色のある農産物を生産しています。国民一人一人がこれらの良質な食料にいつでもアクセスできることは、食料安全保障の重要な要素の一つです。
My Answer
政策課では、食料安全保障の確立に向け、省内の関係部局への提案や政策の進捗のフォローアップなどの対内的な業務に加え、政府方針の調整、他省庁との協議、農業者に向けた政策説明など、対外的な仕事も担当しています。政府方針の策定に際しては、「食料安全保障」の視点を的確に盛り込むことに向け、関係者との調整を積み重ねています。
これらの業務を進める上では、国内外の情勢や世間の関心を踏まえて「マクロの視点から見てどうか」と、俯瞰的視点から施策に目を向ける姿勢が求められています。今後、他の部署で個別施策を担当する際にも、こうした視点や知見は必ず活かされると思います。
食料安全保障の確立は、目に見える成果がすぐに現れるものではないですが、日々の業務の積み重ねが未来につながっていくのではないかと感じています。今後も、日本各地のおいしいごはんが食卓に届く持続的な食料システム、国民一人一人が良質な食料にいつでもアクセスできる仕組みづくりに関わっていきたいと考えています。
各国との良好な関係を構築・維持するために。

香取 彩人
輸出・国際局 総務課 国際政策室 係員
2021年入省/法学部卒/一般職事務系(行政)
大臣の海外出張の運営で、
「ロジ」に求められるものは何なのか?
官庁の文脈で使われる用語に「サブ」と「ロジ」があります。本会合において「サブ」は会合における議論・発言内容を、「ロジ」は会議や出張等の準備や、スケジューリングを担い、大臣出張の際などの運営に携わります。自分に求められているものは何か、それを常に念頭に置いて職務に従事しています。
My Answer
海外からの要人が政務三役(大臣、副大臣、大臣政務官)に面会される際の対応や、大臣の海外出張を支えることが私の主な仕事です。例えば、令和7年(2025年)には韓国・仁川で第10回APEC食料安全保障担当大臣会合が開催されましたが、この際我々職員は、大臣出張の運営に携わることになります。私は「ロジ」担当として、現地の大使館職員と連携をしながら、出張前の航空券手配や通訳、現地の移動手段等の各種調整、また、出張中には宿泊施設内の事務方作業拠点の設営やタイムスケジュールの管理など、裏方として出張を下支えしました。また、国際会議以外にも、各国と良好な関係を維持・強化するために二国間会談を実施していますが、各国の地域担当と連携し、外交儀礼を意識しながら、政務三役が相手国の大臣や駐日大使と面会(会談)される際の対応をしています。

Q. 自身の担う業務が、
食料安全保障に果たす役割は何なのだろうか?
地球環境の変化等により、食料安全保障は日本だけでなく国境を超える課題となっており、国際協力により安定供給や危機対応を強化することが極めて重要です。特に日本は、食料供給の6割以上を輸入に頼っています。相手国との関係性構築は食料安全保障のカギを握る一つと考えています。
My Answer
APECなど多国間の国際会議や二国間会談の場で日本の立場を明確に主張し、ルールメイキングに積極的に参画するとともに、各国との良好な関係構築・維持が食料安全保障には不可欠です。それがすなわち、持続的・安定的な輸入による食料供給体制を構築することに直結します。その実現を裏方として、現場で基盤づくりを支えていくことにやりがいを感じています。海外出張時には通訳の調整や移動の動線など細かな準備が必要になりますが、イレギュラーな事態を乗り越え、全行程を無事に終えた際に大きな達成感を感じられる仕事です。入省から5年間、地方農政局での勤務から国際会議の随行に至るまで、国内外問わず幅広い業務を経験してきました。国際情勢や地球環境は刻一刻と変化していきますので、前例にとらわれることなく、これまでの経験を活かして、現場と国際社会をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。
農薬・肥料など生産資材の品質と安全を確保する。

髙岸 克行
消費・安全局 農産安全管理課 課長補佐
2006年入省/工学系研究科修了/総合職技術系(理工Ⅳ(現在の化学・薬学・生物))
Q. 科学に基づき、日本の食料安全保障をどのように支えるのか?
安全な食品を安定的に供給するためには、農業生産を支える農薬や肥料の品質と安全を確保することが重要です。科学的根拠に基づく制度の企画と運用を通じて、食料安全保障を支えています。
My Answer
入省以来、消費者に安全な食品を安定的に届けることをミッションとして仕事に向き合ってきました。現在、農作物生産に必要な農薬や肥料など生産資材の品質と安全を確保する制度等の企画・運用について総合調整を担当しています。
農薬は、病害虫や雑草から農産物を守り、品質の良い食品を安定的に供給するために不可欠であり、食料安全保障上も重要な資材。気候変動が進み、病害虫のリスクが高まる中、その役割はさらに増大しています。農林水産省は、関係府省と連携して、農薬の品質や人の健康、環境への影響を厳格に審査するとともに、近年、最新の科学的知見に基づく再評価を進め、農薬の一層の安全性向上を目指しています。
肥料に関しては、化学肥料の原料のほとんどを輸入に頼っており、国際価格の高騰の影響を受けやすい現状があります。安定的な肥料供給のために推進しているのが、国内の未利用資源の肥料利用拡大です。下水汚泥などを原料とする肥料について、安全を担保した上でより使いやすくするための新たな規格を設定し、制度面から肥料の供給を支えています。
こうした取組を通じて、農業の生産性向上と消費者の健康保護を両立させるとともに、資源循環を通じた持続可能な社会の実現に貢献していきます。

Q. 安全な食品を未来につなぐために、
どのような力が求められるのか?
科学的根拠に基づき課題の本質を見極め、多様な関係者と協働しながら、消費者と生産者双方にとって最適な解を模索する力が求められます。
My Answer
これまで、上記の仕事のほかにも、農産物・加工食品の生産・製造現場の方々と連携した食品の安全性向上対策の策定・普及や、食品安全に関する国際基準の策定に携わってきました。日々の仕事では、科学的根拠を軸に、国際的な整合性や現場での実行可能性を念頭に置きつつ、多様な関係者と粘り強く対話を重ね、消費者と生産者双方にとって最適な解を追求しています。その中で、「ありがとう」の言葉をいただいたとき、施策が人々の行動変容につながったとき、また日本代表として国際会議で議論をリードし合意に至った瞬間には、この仕事のやりがいを実感します。
未来の子どもたちが安全な食品を食べられるように、「食品安全のプロ」として、科学に基づき現場課題に向き合い、より良い施策につなげるとともに、日本の先進的な取組を国際ルールに反映していきます。
産業振興
食料を安定的に供給し、また地域経済を成長させるためには、農林水産業・食品産業を発展させることが必要不可欠です。その実現に向けて、品目(米、野菜、果樹、肉、乳製品、水産物等)ごとの振興を図りながら、農林水産物・食品の輸出促進と国際交渉により海外マーケットを獲得し、さらにフードテックなどの新事業の創出にも取り組んでいます。また、人口減少に伴う農業者の減少が見込まれる中、地域計画に基づく担い手への農地の集積・集約化を進めています。
施設園芸の振興に向けた新たな取組。

工藤 なつみ
農産局 園芸作物課 花き産業・施設園芸振興室 係長
2019年入省/農学研究科修了/総合職技術系(農業科学・水産)
Q. スマート農業の推進や担い手不足といった課題に対して、
どのような施策が効果的だろうか?
トマトやいちご、きゅうり、メロンなど、ビニールハウスを利用した栽培方法は「施設園芸」と呼ばれます。日本の施設園芸農家数は高齢化等に伴い年々減少していますが、 1戸当たりのハウス面積は約20aと変化がなく、規模拡大は進んでいないことから、ハウス面積も減少傾向にあります。こうした状況の中、安定供給を確保するためにはスマート農業の活用等により生産性を向上させることが求められています。
My Answer
日本の施設園芸は、野菜等の出荷期間を延長するため、ハウス内への加温設備の導入、さらにはハウス内の環境を制御できる装置の導入へと高度化してきました。これにより、温度や湿度、二酸化炭素濃度等のハウス内の環境を計測するだけでなく、計測データをもとにした自動制御により作物に最適な栽培環境を保つことで、生産効率の向上や高品質化、収量増加が可能となりました。こうした環境制御装置を備えているハウス面積は全体の数%程度ですが、天候に左右されずに野菜等の安定供給を確保するためには、こうした環境制御装置の活用等によるハウスの高度化が重要であることから、更なる導入推進に取り組んでいます。

Q. 施設園芸分野での環境負荷低減の取組は?
環境負荷低減も施設園芸を取り巻く課題の一つです。施設園芸は、冬季に化石燃料である重油を燃焼して加温するため、CO₂をはじめとした温室効果ガスを多く排出しています。
My Answer
農林水産省は、2025年までに化石燃料を使用しない「施設園芸ゼロエミッション」という目標を掲げており、その実現に向けて、施設園芸分野でも「ヒートポンプ(農業用エアコン)」等の化石燃料に依存しない加温方式への転換促進にも取り組んでいます。環境負荷低減に効果があるだけではなく、為替や国際的な市況の影響で変動しやすい燃料価格の影響を受けにくい経営への転換にも資するものと考えております。施設園芸という一つの分野に対して様々な面からアプローチすることで、持続可能な施設園芸の実現に貢献したいです。
時代が求める新たな「家畜の改良」を推進する。

井原 翼
畜産局 畜産振興課 係長
2019年入省/農学研究科修了/総合職技術系(農業科学・水産)
Q. 消費者ニーズや社会の変化に対して、
どのような家畜の生産が求められているのか?
畜産業の課題は少なくありません。生産現場における高齢化や担い手不足が進んでいるほか、飼料価格の高騰等により生産コストは増大しています。さらに消費に目を向けると、高齢化や健康志向の高まり等を踏まえ、多様な消費者ニーズに応じた畜産物生産を進める必要があります。
My Answer
令和7年(2025年)には、家畜の改良に関する目標(家畜改良増殖目標)の改定を行いました。これは概ね5年を目途に、時代やニーズの変化に対応して改定が行われるものです。例えば和牛肉。平成3年(1991年)の牛肉輸入自由化以降、輸入牛肉との差別化を図るため、脂肪交雑(いわゆるサシ)を増やし霜降り肉を目指す改良が進められ、和牛肉は、輸入牛肉との明確な品質差を有するに至っています。しかし、今後国内では高齢化・人口減少が進展していく状況で、霜降りの肉だけを目指して作り続けるべきでしょうか。そこで今回の目標では「霜降り」一辺倒ではなく、脂肪の質などの指標の向上や、適度な霜降りを目指した飼養方法(短期肥育・早期出荷)の推進を位置付けることで、消費者ニーズに合った生産の実現を目指します。

Q. 畜産業の持続的な発展のために、
どのような姿勢、考えで臨めば良いのか?
家畜の改良は時間がかかる取組です。一つひとつは地道な取組の繰り返しで、終わりはありません。立場によって主張も異なります。その中で着地点を探り、国が中長期の目標を示す必要があります。畜産業の持続的な発展のために何が必要なのか、追求していきたいと考えています。
My Answer
私は課の窓口として、課内の業務が円滑に進むよう、各種作業や予算要求のとりまとめを行っています。そこで重要な役割が関係者間の調整であり、合意形成です。人は立場によって主張が異なります。生産者と消費者、耕種農家と畜産農家では逆の意見が出ることもありますし、同じ畜産農家の中でも畜種や産地によって意見が異なることが多々あります。それぞれの主張に一理ある場合が多いですから、複数の関係者を取り持ちつつ、着地点を探ることが役所の仕事となります。そこで今回の目標改定では、相手の立場に立って考えることと、状況を俯瞰してあるべき方向を考えることを同時に意識して取り組みました。10年後には国内外のニーズも変わり、今の目標は時代にそぐわなくなっているかも知れません。それでも常にアンテナを張り、目指すべき方向を考え続けるのが畜産業の持続的な発展に重要で、そのような地道な作業こそ国が果たすべき役割と考えています。
農業者の資金ニーズに応える「農業金融」。

落合 真衣
経営局 金融調整課 係長
2020年入省/法学部卒/総合職事務系(教養)
Q. 農業の担い手を支え、資金ニーズに応えるため、
「農業金融」はどうあるべきなのか?
現在、日本の農業では、農業者の減少・高齢化が進む一方で、法人経営体の増加や経営規模の拡大、スマート農業や輸出拡大などの新たな挑戦が進み、資金ニーズが高まっています。こうしたニーズに応え、農業の担い手の経営の安定・発展を支えられるよう、農業金融のあるべき姿について検討を進めています。
My Answer
農業の多様な担い手を資金面から支えていけるよう、国の資金を活用した融資制度の見直しや、民間金融機関による農業金融の強化を後押しすることが私のミッションです。農業金融制度は、「予算・税制・法律」といった、幅広い政策ツールによって支えられていますが、私はその中でも法令制度の企画・運用を担当しています。農業者が利用できる融資制度を時代やニーズの変化に合わせて改善し、農業金融を一層強化していけるよう、現在は関係省庁と連携しながら、法律の改正作業に取り組んでいます。具体的には、農業者向けの長期・低利の制度資金について、貸付上限額の引上げや償還期限の延長を行う等、農業者がより利用しやすい制度への見直しを行っています。これらの取組によって、現在の担い手を支えるほか、将来の担い手も呼び込んでいくことで、日本の農業を強くし、魅力ある成長産業へと変革していきたいと考えています。

Q. 融資や出資を受けにくいという農業の課題に対して、
国が果たすべき役割は何だろうか?
農業は、天候や自然災害の影響を受けやすく、1年に1度しか収穫ができない作物が多いなど収益構造も特殊です。また、投下した資本の回収まで時間がかかるため、通常の融資や出資が受けにくいという課題があり、公的な支援が重要です。
My Answer
農業金融には、他産業とは異なる特殊性があるため、国や地方公共団体が公的資金を活用し、融資制度を設計・運用するなどの政策的支援が欠かせません。こうした制度を支える重要な手段の一つが法律であり、国にしか持ち得ないツールを通じて農業経営の安定と発展に寄与できることは、このプロジェクトの大きな意義だと考えています。農業者の経営を直接支える制度づくりに携わることで、日本の食を支える一翼を担えていることに、強い使命感とやりがいを感じています。入省当時の志望動機である、農林水産業の成長産業化を実現し、農業や食を通じて、日本を元気にしたいという想いは今も変わりません。一方、キャリアを重ねる中で、その実現のための政策ツールが多様であることを実感しており、今後も幅広い政策分野を担当しながら、自身の専門性も高めていきたいと考えています。直近では米国留学も経験させていただいたので、いずれは地方でも勤務し、現場により近い場所で農林水産行政の経験を積んでいきたいと思っています。
地域振興
美しい景観・伝統的な食・古民家といった地域の宝を磨き上げ、関係人口を創出し、農山漁村を振興しています。あわせて、世界に誇る和食文化を核として地域を活性化する取組を実施しています。また、農林水産業の競争力を高め、農山漁村を災害から守るため、農地やダム、森林、漁港といったインフラの保全や管理・整備を進めています。
障害者が農業に従事する機会を提供する「農福連携」。

浅沼 沙也加
農村振興局 農村政策部 都市農村交流課 農福連携推進室 係長
2018年入省/文学部卒/一般職事務系(行政)
Q. 「農福連携」を広め、参入しやすい環境にするために、
どのような取組が求められているのだろうか?
「農福連携」は、障害を持った人をはじめとする多様な人たちが農業分野で活躍することを通じて、農業の発展とともに、自信や生きがいを持って社会参画することを実現できる取組です。
My Answer
障害を持った人たちの中には、同じ作業を集中して長時間できたり、細かいところまで注意深く観察できたりする個性・特性を持っている人もおり、それが農業という仕事に生かせます。農業に関する作業は多種多様なので、障害者の特性に応じた作業の割振りが可能です。自分の個性・特性を生かせる農業に携わり、活躍することで、自信や生きがいを持って社会参画することが実現できます。
農福連携は比較的新しい取組なので、一般にはまだ認知度が低い現状があります。まずは、より多くの方々に知っていただくことが重要です。そのため、イベント運営などを通じて広く情報発信を行っています。そこを入口に、農福連携に興味を持ってくれた方や始めたいと思ってくれた方に対しては、スタートアップマニュアルやそれぞれの立場・段階に応じた手引書の作成によって、欲している情報を得られるよう発信しています。さらに、優良事例を収集・発信することで、農福連携の横展開を図り、「知られていない」「踏み出しにくい」「広がっていかない」といった課題の解決に取り組んでいます。

Q. 「農福連携」の推進によって、
どのような効果がもたらされるのか?
農福連携は、高齢化が進む農業分野においての喫緊の課題である労働力の確保や荒廃農地の解消と、福祉分野においての課題である障害者の働く場の確保や賃金向上という両分野の課題解決に寄与します。農福連携を推進することで、誰もが活躍し、生きる力や可能性を最大限発揮できる地域共生社会の実現に貢献できます。
My Answer
地域共生社会の実現に寄与できるという点で、農福連携は、社会的意義も高く、農福連携を通じた活動や地域のつながりが、地域活性化にも貢献できると考えています。
農福連携は、現在、農業×福祉だけではなく、林業や水産業への取組拡大、高齢者、生活困窮者、犯罪をした者、ひきこもり状態にある者など「生きづらさ」を抱えて社会参加に不安を感じている多様な方々へ対象拡大を行っている最中です。林野庁や水産庁、厚労省、法務省、文科省など各省庁と連携し、すそ野を広げながら、もっとメジャーな存在になるよう、様々な視点で普及啓発活動を行っていきたいです。
地域に変革をもたらす「農業農村の基盤整備」。

村井 隆人
農村振興局 整備部 水資源課 係長
2019年入省/農学部卒/総合職技術系(農業農村工学)
Q. 農業農村整備事業は、
どのような役割をはたしているか?
農業農村整備事業は、農業生産を支える「水」と「土」を対象とし、良好な営農条件を備えた農地や農業用水を確保し、有効利用することで、農業の生産性向上を図るとともに、気候変動等による災害の防止・軽減を通じて、持続的な農業生産を可能とする施策です。さらに、事業により生み出された農産物や景観等の地域資源を生かした農泊等の取組を通じて、地域の付加価値を高め、農村地域の振興を促すという重要な役割も担っています。
My Answer
私は入省以来、農業生産の基礎となる農業用水の確保や、水利用の安定化・合理化等を目的とした農業水利施設の整備・更新等を行う「かんがい排水事業」に取り組んできました。入省2年目から3年目にかけては、大規模で、地域の根幹を支える国営かんがい排水事業に取り組みました。現在は、国営事業と比べて受益面積が小さく、都道府県、市町村、土地改良区が主体となって実施するかんがい排水や畑地の整備に関する事業について、制度設計、予算要求、事業の進捗管理等を担当しています。かんがい排水事業をはじめとする農業農村整備事業は、「地域を変える」力を持ち、単なる農業振興の手段にとどまらず、「地域に変革をもたらす」プロジェクトであると考えています。

Q. 農業農村整備事業における、
自身の使命と今後の展望は?
農業農村整備事業を力強く推進することで、先人から受け継いだ農地や農業用水を守り、農業・農村の基盤をさらに発展させ、魅力ある農業・農村を次世代に引き継ぐ――すなわち「未来へ、歴史を紡ぐ」ことが、私たちの使命であると考えています。
My Answer
農業農村整備事業の推進を通じて得る知見や経験は、我が国のみならず、世界の食料問題や農業・農村の課題解決にも貢献できるものだと考えています。今後は、これまで活躍されてきた先輩方のように、農業農村整備事業を通じて培ってきた知見を活かし、国際機関における技術協力や日本の農業政策を軸とした外交にも携わることで、日本のプレゼンスを高め、「強い日本」の実現に貢献していきたいと思っています。
食文化「和食」の保護・継承を推進する。

湯山 貴美
大臣官房 新事業・食品産業部 外食・食文化課 食文化室 係員
2024年入省/経営学部卒/一般職事務系(行政)
Q. 和食文化の保護・継承のために、
どのような取組が必要だろうか?
平成17年(2005年)に制定された「食育基本法」において、「食文化の継承に向けた食育の推進」が重点課題とされ、また平成25年(2013年)にユネスコ無形文化遺産に「和食;日本人の伝統的な食文化」が登録されるなど、「和食」は国内外から注目されています。この食文化の保護・継承を推進するための取組を進めています。
My Answer
具体的な取組の一つが、「うちの郷土料理」や「にっぽん伝統食図鑑」のデータベース化。各地域の郷土料理や伝統食を体系的に整理し、発信しています。食文化の継承にとどまらず、各地の郷土料理を知ることで、「その地域に行ってみたい」「実際に食べてみたい」といった関心が高まり、観光振興や地域活性化に寄与すると考えています。また、「和食文化継承リーダー研修」を実施。各地域における和食文化継承リーダーが中心となって活動することで、子どもたちや子育て世代に対し、和食文化を伝える機会を創出しています。さらに、令和7年(2025年)からは「楽しもう!にほんの味。~和のこころをつなぐ食の国民運動~」(略称:楽し味(たのしみ)プロジェクト)が始動。消費者が「知る→食べる→作る」を体験できる流れを、事業者による価値創造と需要開拓の取組とともに推進しています。

Q. 今後、さらに和食文化や地域の魅力を発信するため、
どのような施策が求められているのだろうか?
郷土料理・伝統食のデータベース化については、関心や注目度も高まりつつあります。また、知るだけではなく、実際にその地域を訪れ郷土料理を味わってもらうことが大切と考えています。そのような行動を促す施策に取り組んでいきたいと思っています。
My Answer
例えば、「うちの郷土料理」。地元の人であっても意外と知られていない料理が掲載されており、自身の地域や地域の食文化を改めて見つめ直すきっかけにもなります。観光で訪れる人にとっても、その地域ならではの魅力を感じ、楽しむことができるデータベースであると思います。今後より多くの人にデータベースを活用してもらい、各地域の郷土料理を知るきっかけを広げていきたい。それによって、和食文化や地域の魅力への理解が深まり、地域振興の力になると考えています。また、訪日外国人旅行者の「食」への関心が高まっていることを受け、地域の食と、それを生み出す農林水産業を核として、訪日外国人の誘致を図る地域の取組を認定する「SAVOR JAPAN」という制度を実施しています。地域に根付いている郷土料理・食文化は、地域の貴重な資源でもあります。今後も裾野を広げながら、かけがえのない「和食」の保護・継承に力を注いでいきたいと考えています。
環境・技術政策
持続可能な農林水産業・食品産業への転換や農業者が減少する中でも食料生産の維持・増大を図るため、「みどりの食料システム戦略」に基づく環境負荷低減の取組やAI・ドローン等のスマート技術の社会実装に挑戦しています。また、カーボンニュートラルに向けた森林資源の循環利用、海洋環境の変化に対応した持続性のある水産業への変革に取り組んでいます。
環境負荷低減の取組が農林水産業の持続性を高める。

長山 和樹
大臣官房 みどりの食料システム戦略グループ 係長
2019年入省/経済学部卒/総合職事務系(経済)
Q. 環境の影響を受けやすい農林水産業を持続させるため、
どのような政策を実施すべきだろうか?
食料・農林水産業は環境の影響を受けやすい産業です。国際情勢の変化や地球温暖化など、食料供給をめぐるリスクが高まる中、食料・農林水産業の生産力の向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定し、食料・農林水産業における環境負荷低減の取組を推進しています。
My Answer
「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに、化学農薬使用量50%低減、化学肥料使用量30%低減、耕地面積に占める有機農業の割合を25%(100万ha)に拡大するなどの目標を掲げています。このため、地域ぐるみで有機農業の拡大を進める「オーガニックビレッジ」といった先進的なモデル地区を順次創出し横展開を進めるなど、様々な取組を実施しています。私は、このような農林水産業における環境負荷低減の取組の一つとして、生物多様性保全を担当しています。例えば、稲刈り後の水田に冬期も水を張る「冬期湛水」は、渡り鳥の餌場となることに加え、水田の多様な生物の保全や、雑草や害虫の発生を抑制する効果も期待できる農法であり、環境保全型農業の手法の一つとして推進しています。

Q. 環境負荷低減の取組の推進は、
農林水産業に何をもたらすのだろうか?
農林漁業者にとっては、環境負荷低減の取組を実施することはコストにもなります。一方で、環境負荷低減の取組を実施することで、農林水産業自らの持続性を高めることになるほか、農山漁村の活性化にも寄与する可能性があります。
My Answer
環境負荷低減の取組を推進していくことは、農林水産業自らの持続性を高め、持続的に農林水産業が営まれることにより、地域コミュニティの維持、国土保全等につながるほか、農林水産省の最重要ミッションである食料の安定供給に寄与します。今後は、農林水産業における環境負荷低減の取組を引き続き推進しつつ、気候変動の影響が深刻化する中では、気候変動に適応した農林水産業を実施していく必要もあると考えています。また、民間企業等におけるネイチャーポジティブ(自然再興)への関心も高まっており、この動きを的確に捉えて農林水産分野に民間投資を呼び込み、ひいては農山漁村の活性化につなげていきたいと考えています。
木材の利用拡大で地球温暖化対策に貢献する。

長谷川 学
林野庁 林政部 木材利用課 課長補佐
2010年入省/農学研究科修了/総合職技術系(農学Ⅲ(現在の森林・自然環境))
Q. 地球温暖化対策、脱炭素社会の実現に向け、
木材の利用拡大をどのように進めていくべきか?
現在、脱炭素社会の実現に向け、世界各国で様々な取組が推進されています。その一つとして、私が取り組んでいるのが木材の利用拡大です。なぜ、木材の利用拡大が脱炭素と関連するのか。この取組は、木材を利用することが、長期間炭素を貯蔵する等により二酸化炭素の排出抑制につながることに着目しています。
My Answer
森林は、空気中の二酸化炭素を吸収し固定して成長していることから、適切な森林整備や植林を行い、森林資源を循環利用することは、炭素を吸収する機能を高め、地球温暖化対策に貢献します。加えて、伐採した木材を製品として利用すれば炭素が長期間貯蔵されること、また木材は鉄等の他資材より製造時のエネルギー消費が少ないこと等から、木材利用の推進は二酸化炭素の排出を抑制し、脱炭素社会の実現に貢献します。こうした背景から、木材利用の主な用途である建築物等への木材利用を促進する目的で制定されたのが「都市(まち)の木材化推進法」です。現在、低層住宅では約80%で木材が利用されていますが、非住宅・中高層建築物においては約6%にとどまっていることから、非住宅・中高層建築物での木材利用を拡大することが大きなテーマです。

Q. 積極的な木材利用による循環型社会の実現、
そのために必要なことは何だろうか?
非住宅・中高層建築物での木材利用が容易に進まない背景には、コストや技術面、木材調達面、人材育成面等でのボトルネックがあります。これらの課題について、建築主や設計者、施工者、木材事業者など関係者間で理解を深め、連携を進めることで解決を図っていきたいと考えています。
My Answer
建築物への木材利用は地球温暖化防止に貢献するだけでなく、リラックス効果や免疫力アップなど、生理・心理面にも良い影響を与え、ウェルビーイングにも貢献するとして近年注目が集まっています。木の良さをより広く普及し、木材、特に国産材の利用拡大を図ることで、「伐って、使って、植えて、育てる」持続的な森林整備につなげ、持続可能な社会の形成を実現できると考えています。近年、建築物への木材利用に係る耐震性・耐火性等の技術開発や制度の合理化が進んでおり、それに伴い、国産材を積極的に利用した中高層ビルを大手建設会社等が建設する事例が増えてきました。このように、街の多くの建築物で積極的に木材が利用される社会の実現を目標に、木材利用の促進と林業・木材産業の振興を通じて豊かな社会の形成に貢献していきたいと思っています。
マグロの資源管理と操業機会の維持を目指して。

飯岡 真子
水産庁 資源管理部 国際課 課長補佐
2011年入省/海洋科学部卒/総合職技術系(農学Ⅳ(現在の農業科学・水産))
Q. マグロ資源を維持・管理に向け、
国際的なルール作りはどうあるべきだろうか?
マグロをはじめカツオ、サンマなどは「高度回遊性魚類」と呼ばれています。これは、排他的経済水域の内外を問わず広く回遊する魚類で、国連海洋法条約においては、この資源の回遊域に当たる沿岸国と漁獲を行う国がすべて参加する、国際機関によって保存管理すべきとされています。
My Answer
マグロの国際機関は、海域ごとに現在5つあり、日本はすべてに加盟。各機関で年1回、「Commission」と呼ばれる会議が開催され、そこで漁獲上限、操業ルールといった漁業に関するルールが採択され、加盟国はこれを履行する義務を負っています。そのため、合意された国際ルールを我が国法令に書き下し、その後新しい法令を漁業者や関連業者に周知し、遵守を求めていきます。この一連の流れの中で、国際会議でのルール作りから国内法令担保までを担当。私たちの役割は、国際会議において合意される漁獲上限、操業ルールが、科学的根拠に基づく資源管理のもと、我が国漁業の操業実態を踏まえたものとなるよう修正・提案することです。合意された国際ルールは、国内法令のどの部分にどのような形で担保するのが適当か、関係者でよく協議の上、法令改正作業を行っていきます。

Q. マグロ資源やマグロ漁業は、
国際環境問題とどのように関連してくるのか?
マグロの国際会議では、環境問題への関心の高まりに伴い、地球温暖化がマグロ資源に与える影響、マグロ漁業が生態系へ与える影響への考慮など、議論の幅が広がっています。
My Answer
マグロの持続的利用のための資源管理と操業機会の維持が肝要です。その上で、国際的な環境問題の拡大に、水産業の観点からどのように対応していくか、国内漁業管理の文脈で何ができるのかについて、考えていきたいと思っています。私は元々漁業者の方々が操業しやすいルール作りに少しでも貢献したいという思いで入社しましたが、志望理由に近い業務に従事していること、多少なりとも漁業の役に立てていることにやりがいを感じています。今後も、我が国マグロ漁業を維持・発展させ、そして消費者がいつまでもマグロが消費できるように尽力していく考えです。